

フードコートに溶け込む“カメレオン”の輝き
STAFF STORY #10
亀谷 由紀乃さん フードコートオペレーター
Oct 10,2025
おいしいグルメやカフェタイムでリフレッシュした後に、ワクワクした気分でショッピングに向かう。そんな経験をしたことはありませんか?御殿場プレミアム・アウトレットで働く人の、知られざる素顔にフォーカスする「STAFF STORY」。今回の特集では、フードコートで働く一人のホールスタッフを紹介します。普段はあまり意識されることのない存在ですが、その仕事に目を向けると、快適な空間を守るために日々奮闘している姿が見えてきました。
掃除だけじゃない、富士山ポーズでおもてなし
「富士山が見えない時はこんな風に、ごめんなさい本当はここにあるんです!ってお伝えしています。そんな、お客さまとの何気ないやりとりが、私の喜びです」

両腕をグッと伸ばして富士山の形を作りながら、仕事のやりがいについて話してくれたのは、ヒルサイドエリアのフードコート「いただきテラス」のホールで働く亀谷由紀乃(かめたに ゆきの)さん。
「最初の教育の際に、テーブルと椅子を拭いて清掃だけしていればよいという、いわゆる“お掃除おばさん”的な仕事ではないですよね?と聞いたら『その通りです。そのつもりで来られたら困ります』とハッキリお答えいただき、求められるレベルの高さを強く感じました」
亀谷さんの主な仕事は、来店されたお客さまが快適に過ごせるようサポートする“お客さま対応”と、急病人の方への初期対応などを行う”緊急対応”の2つです。もちろん、清掃や片付けなどの環境整備も行いながら、常に目配り・気配りを欠かさず、お客さまと向き合う時間を大切にしています。

笑顔の秘密は、冷蔵庫メモとインターバル走
「普段のお買い物よりも“非日常感や特別感”を期待して来場されるお客さまが多いです。“ワンランク上の空間でお過ごしいただくこと”を心がけて、全力の笑顔でラウンドしています」

フードコートが、お客さまにとって単なる食事や休憩の場ではなく“一日のショッピング体験に、彩を添える空間であって欲しい”と考える亀谷さん。お客さまに快適な時間を届けるため、日々コツコツとスキルを磨き、体力向上にも取り組んでいます。
「英語が得意ではないのですが、よく聞かれる質問に答えるためのフレーズを調べて覚えるようにしています。長い文章にしてしまうと伝わりづらいので、子どもが話すような『お腹が空いた』『ジュースが飲みたい』といった短い言葉を、翻訳アプリなどで調べてメモしています。たとえば“ホテルに行くためには屋上まで上がる”という表現を調べてメモを作ったら、毎日目にする“家の冷蔵庫”に貼って覚えるんです。今はバンバンジーのレシピと一緒に、英語のフレーズが貼ってあります」

「体力作りのため、お休みの日はインターバル走や筋トレをしています。たとえば、お客さまが席を立たれた後にお忘れ物があると、後ろ姿を見つけて全速力で走りながら、お客さま!エクスキューズミー!と声をかけることがあります。お財布やクレジットカードなどのお忘れ物も、なるべく早く警備室に届けるために走るのですが、長時間ホールを空けておくわけにもいかないので、とにかくスピード勝負なんです」
バブルとコロナ、2つの波を乗り越えて
もともと車が好きで、一人でもモータースポーツ観戦に出かけるという亀谷さん。1990年代に新卒で入社したのは日本車のディーラーでした。当時、お客さま対応や営業など幅広い業務をこなす中で培ったスキルが、今の仕事にも結びついているといいます。
「バブルは崩壊していましたが、会社にはまだ余力があり、教育にも力を入れてくれていました。研修やセミナーのために講師を招き、スタッフを集めて講習を受けることもあれば、泊まり込みで1週間みっちり研修を受けることもありました。まさにロールプレイングの嵐で厳しかったですが、大きな学びになりました。お辞儀の仕方や、お客さまへの声のトーンなど、当時の経験は今の接客にも役立っています」
その後、亀谷さんは職場結婚を経て転職。和食系ファミリーレストランのキッチンで長く働いていましたが、2020年に転機を迎えます。コロナ禍で多くの飲食店が営業時間の短縮を余儀なくされ、その影響を受けることになりました。
「20時以降のシフトに入っていたスタッフは全員、人員整理の対象になりました。働かなければ生活が苦しくなると思いながらも、当時は飲食関係の仕事がなかなか見つかりませんでした。そんな中、地元では“職に困ったらアウトレットに行け”と言われていたことを思い出し、現在の職場に応募しました」
完璧よりも大切な、お客さまの100点満点
2020年6月。ヒルサイドエリアのオープン直後から「いただきテラス」のホールで働き始めた亀谷さん。“お掃除メインではない”という心構えは理解しながらも、約20年ぶりの接客に不安を抱えながらのスタートでした。

「毎日、ハァッ!と気合いを入れてホールに入っていきます。最初お客さまにお声がけをするのは、とても勇気が必要でした。迷っているうちにタイミングを逃してしまうこともありました。そこで、“今日はコレを頑張る”と、仕事前に小さな目標を決めるようにしたんです。たとえば“今日は必ずキッズチェアのお声がけをする”だったり“今日は絶対に疲れた顔を見せない”などです。1日1つの目標をクリアし続けることで、毎日がより充実したものになっていきました」
小さな成功体験を積み重ねることで、着実にスキルアップしていった亀谷さん。しかし、最も苦労したのは、シフトの都合上どうしても一人で広いエリアをカバーしなければならない時間帯でした。当初は業務を思うようにコントロールできず、辛く感じることもあったといいます。
「そんな中で会社の教育係の方に言われたのが、『全部やろうとしなくていい』という言葉でした。すべてを完璧にしようとすると、テーブルや椅子の清掃ばかりに気を取られて、お客さまを見られなくなってしまうからです。そこで、“大切なのは目の前のお客さまにとっての100点を目指すこと”と、考え方を切り替えました。たとえば今は、エアコンの効きがよい席や店舗に近い席など、お客さまが快適に過ごしやすい席を優先的に整えるなど、メリハリをつけるようにしています。そうした“優先順位の付け方”を覚えてからは、余裕を持ってお客さまに向き合えるようになりました」

そして、“目の前のお客さまにとっての100点”を目指し奮闘する亀谷さんのもとに、お客さまからのメッセージが届きます。それは『子供がジュースを服と床にこぼしてしまった際、清掃を担当している亀谷さんという方が迅速に対応してくれた』と、感謝の言葉を伝える内容でした。
「緊急時の対応ではなく、日常の何気ないシーンでの対応に感謝のお手紙をいただけたことは本当に嬉しかったです。普段の仕事をしっかり見て評価してくださったと実感できたことで大きな励みになり、これからも丁寧に仕事に向き合おうという気持ちが強まりました」
向上心を胸に、65歳まで駆け抜ける

こうした日々の接客が評価され、御殿場プレミアム・アウトレットの表彰制度「Premium Outlets Staff Awards」で最高グレードのプラチナスタッフに認定。さらに、所属する運営会社からも『日頃からの模範的な業務姿勢がチーム力向上に貢献している』として、別途表彰される栄誉を受けています。そんな亀谷さんに今後の目標を聞きました。
「少なくとも65歳まではこの仕事を続けたいと思っています。ただ、キッズチェアを“2個持ち”できなくなったら少し厳しくなるかもしれません。今はまだ、大人用の椅子も2つ同時に運べます」

「体力も英語力も、“維持”するだけでは必ず衰えてしまうと思うので、インターバル走の回数を増やしたり、覚える英語フレーズを増やしたりして、常に向上心を持ち続けたいです。これからも全力の笑顔で。私は特に、笑っていなくても笑っているように見える顔をしているので、そんな風に産んでくれた親に感謝しながら、これからも頑張っていきます」

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